主たる職業として政治に携わる人々。今日では政治家は、中央、地方の議員、地方自治体の首長などもっぱら選挙によって選ばれるが、このような地位に就くことを志して準備している人々も政治家とよんでよい。政治の重要な決定に参画している高級官僚も政治家である。特にアメリカ合衆国では新任の大統領が政界だけでなく、財界、学界、言論界などから広く人材を集めて政府高官に任命するが、彼らもまた政治家である。革命やクーデターによって政権を握った革命家や軍人は、いわば互選による政治家である。歴史的には政治家は官僚とデマゴーグ(扇動家)から生まれた。君主をはじめとする最高統治者は、自分を取り巻いている封建諸侯などの伝統的な有力者と対抗して権力を行使するために、自分の手足のように使える官僚を養成する。官僚は従来の有力者の地位を掘り崩し、人々がさらに広く政治に参加する道を開く。軍部を含む官僚制は国家の統一、独立のための重要な手段となった。他方で近世自由都市(日本では近世の堺などがそれに近かった)のデマゴーグは、住民の支援を集めて下から権力に参加していく。私財を投げうって国事に献身して残るは井戸と塀ばかりという井戸塀政治家が、私心のない模範的政治家として今でも尊敬されているが、それは財産のある人々だけが政治に参加できた時代の話である。政治家は一方では議員から大臣へ、大臣から首相へと名誉心と権力欲の充足を求める。イギリスや日本のような議院内閣制のもとでは、政治家として大成するには長い修業期間が必要である。他方で政治家は、自らの理想、経綸の実現を目指す。権力欲に走る政治家をポリティシャン、理想を求める政治家をステーツマンと区別することもあるが、政治には権力と理想の両方が必要である。