意味内容は複雑であり、用語法は多岐にわたる。(1)もっとも通俗的には、あらゆる職業にそれ固有の倫理(たとえば商人の倫理としての商業倫理。泥棒にもその道の倫理があるとさえいわれる)があるように、政治家には政治倫理があるとする用法である。ロッキード事件を受けて、国会は政治倫理についての綱領と行為規範を定め、国会法の中に特に政治倫理についての一章を設けた。(2)日本の政治家が「政治は最高の道徳である」という出所不明の格言を引用する場合には、古代ギリシャや古代中国、あるいは明治以前の日本で、政治がそのまま社会倫理の実践とされたことに由来している。(3)近代の政治では、マキャベリに始まる権力行使そのものの反倫理性という問題がある。つまり権力行使の反倫理性を自覚することが政治倫理とされるのであるが、これは現代日本にとっては高尚すぎる議論である。