新聞やテレビなどのマスメディアは、メディア主体が巨大資本に支配されがちであることから、個々人を孤立させ、無力感を生む。それに対してインターネットを通じて生まれる連帯がマスメディアよりも大きな政治的、社会的な力となるという議論があらわれた。2012年末、国際テレコミュ二ケーション連合の提案したインターネットガバナンスにかかわる条約案は、アメリカをはじめ多くの国の反対にあって締結されずに終わった。それは政府にインターネットに介入し、検閲する不当な権利を与えるというのが大方の理由であった。12年1月には、アメリカでハリウッドが提唱した海賊規制の法案が議会で否決され、2月には欧州連合(EU)で、知的財産権保護を目指す法案が言論の自由とプライバシーを侵害しているという理由で否決された。ブラジルでは、インターネット人権宣言とでも呼ぶべきものが可決された。パキスタンではインターネットに対する政府の規制が廃案に追い込まれ、フィリピンではサイバー犯罪法案が最高裁判所の判決で保留処分となった。28の国で海賊党が生まれ、06年にドイツで発足した海賊党は、四つの州の議会で議席を獲得している。逆に中国における政治改革を求める運動、アラブの春を発動させたインターネットの運動を政府が規制するのはますます困難になっているようである。