行政組織の核心は職務(所掌事務)と権限(責任)の配分である。組織全体の仕事を個々の職員が分担できるまで分割し、その職務の遂行に必要な権限と責任を明確にし、個々人に割り当て仕事をさせる組織形成の方式をとれば、欧米の役所にみられるように、職場の風景は個室執務が原則となる。これに対して日本の府省の職場は大部屋(相部屋)執務が普通である。これは、個々の職位ごとの職務内容と権限が詳細に特定化されておらず、仕事が係や課(室)といった組織の基礎単位の集団責任として処理されていることを意味する。
大部屋主義の運営の特色は、(1)その一所で仕事をする全員がお互いに協力し合うことが可能であること、(2)仕事ぶりや人柄を縦横に評価し合うこと、(3)集団に属して仕事を行うため課や係の一員として他の職員と協調的な人間関係を形成・維持できるかどうかが、個々の職員にとっても、管理職者にとっても大切な配慮事項となること、(4)課や係の仕事を何人の職員で行うのが最適であるかという組織の適正規模があいまいになりやすく、員数の点で組織が一定の伸縮性(スラック)をもっていることなど。