小渕恵三元首相の外交についての演説などで、頻繁に取り上げられた概念が「人間の安全保障」という考え方である。世界的にも、近年しばしば言及されるようになった。特に定義があるわけではないが、「外交青書」は、「環境破壊、人権侵害、国際組織犯罪、薬物、難民、貧困、対人地雷、エイズ等感染症といった人間の生存、生活、尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威を包括的に捉え、これらに対する取り組みを強化する考え方」だと規定している。これまでに最も包括的にこの考え方を述べたのが、1998年12月に小渕首相がハノイで行った政策演説で、この中で、国連に「人間の安全保障基金」を設置するため5億円を拠出すると発表した。