原子力の平和利用における協力のための日印間協定で、2016年11月11日に東京で署名され翌年6月7日に国会で承認、7月20日に発効した。前文、本文17カ条、末文および二つの附属書で構成されており、核物質などの平和的目的に限った利用、国際原子力機関(IAEA)による保障措置の適用、核物質などに関する情報の交換、核物質などの防護措置の確保、インドにおける再処理、協定の終了や協力の停止、再処理の停止などが規定されている。
インドは08年に核実験モラトリアムなど原子力の平和的利用を進める決意を表明した。これを受けて原子力供給国グループは、核兵器不拡散条約(NPT)を締結していないインドへの原子力関連資機材などの移転を例外的に可能とする旨を決定し、16年秋までにアメリカやフランスをはじめ9カ国がインドとの原子力協定を締結した。日印間では10年6月に交渉が開始された。日本国内では、インドを事実上「核兵器保有国」と認めるに等しい本協定がNPTの精神にも日本の非核政策にも背馳するという批判がみられた。他方で、人口増加と経済成長によって高い電力需要の見込まれるインドは、原子力発電所を含むインフラ輸出を経済成長戦略の一つの柱とする安倍内閣にとって魅力的であった。戦略的に重要なパートナーであるインドとの関係を深化させる効果も期待された。
ただ、インドが核実験を再開した場合の協力停止規定は協定本体とは別の公文に盛り込まれ、臨界前核実験を実施した場合に協力を停止するのか否かも明らかではない。いったん輸出された核技術や物資を協力停止後にどのように取り扱うかも不透明で、原子力技術の流出に終わるというリスクも存在している。