日露間の最大の懸案である北方領土問題は、4回の首脳会談、3回の外相会談をはじめ政治対話が活発化した2016年に進展への期待が高まった。同年5月、ソチで開催された日露首脳会談で、安倍晋三首相とウラジミール・プーチン大統領は、従来の平和条約締結交渉の停滞を打破して突破口を開くため、双方に受け入れ可能な解決策の作成に向けて「新しいアプローチ」で交渉を精力的に進めていくとの認識を共有した。これに基づいて6月以降、外務当局間で平和条約締結交渉が進められた。
12月、2日間にわたったプーチン大統領訪日の結果、両首脳は「択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島における日本とロシアによる共同経済活動に関する協議を開始することが、平和条約の締結に向けた重要な一歩になり得るということに関して、相互理解に達した」。共同経済活動は、漁業、海面養殖、観光、医療、環境その他の分野を含み得るものとされ、両首脳は関係省庁にその条件や形態および分野の調整の諸問題について協議を開始するよう指示した。同時に両首脳は、安倍首相がソチでの会談で提示した経済分野における8項目の「協力プラン」を具体化させることを確認した。これに関連して、医療・保健、エネルギー、産業多様化、極東開発、先端技術協力などの分野で合計10本の文書が、企業などが行うプロジェクトについても合計68本の文書が署名された。
北方領土問題については、高齢化した元島民の自由な墓参・故郷の訪問を、「人道上の理由に立脚し」、手続きの簡素化などあり得べき措置を検討することが合意されたことを除けば、4島返還に向けた実質的な進展はなかったといってよい。17年を通じて、北方4島における共同経済活動の具体化に向けて、官民の現地調査や外務省局長級の作業部会など各種協議が実施された。しかし、共同経済活動が平和条約交渉にどのように結びつくのかは現在のところ明らかではない。