攻撃(offense)の対概念で、自らの攻撃性を否認する意図をもって強調されることもある。日本の場合、日米安全保障体制に依拠しながら、憲法上の制約から専守防衛に徹することが国是になっている。国防(national defense)は、自国民の生命・財産、自国の領土と主権を外部の脅威から、主として軍事力をもって擁護すること(国内の脅威に対しては、治安と呼ばれる)。だが、20世紀の二度の世界大戦が総力戦であり、甚大な人的・物的被害をもたらしたことから、第二次世界大戦後は、静的で受動的な国防よりも、動的で能動的かつ軍事力のみにとどまらない国家安全保障(national security)という概念が一般的になった。近年では、さらに国際的相互依存と科学技術の進展を受けて、一国単位を超えた国際安全保障(international security)や協調的安全保障(cooperative security)、また個々の人間の尊厳を重視する人間の安全保障(human security)などが提唱されている。ただし、日本の防衛省やアメリカの国防省(Department of Defense)に見られるように、行政機構のレベルでは、所轄を明確にする意味もあって、依然として防衛という用語が用いられることが多い。