純然たる平時ではないが有事でもない、武力攻撃に至らない侵害が発生している状態を指す。国家などの間に領土、主権、海洋を含む経済権益などについて主張の対立があり、少なくとも当事者の一方が、外交交渉など平和的手段によらず自国の主張・要求をもう一方に受け入れさせることを企図して、武力攻撃にあたらない範囲で実力組織などを用いて現状の変更を試みたり、現状そのものを変更したりする行為が発生している状況である。領海内での潜水艦の潜没航行の継続や、武装集団による国境の離島等への強襲上陸などが想定される。
一般国際法上、国家または国民に対する「急迫不正の侵害」が存在する場合には自衛権を行使することが認められている。日本においては、国会答弁などで「急迫不正の侵害」とは「武力攻撃」、すなわち、日本に対する「組織的計画的な武力の行使」があった場合と説明されてきた。また、自衛隊法等の現行国内法上、自衛権の発動として武力を行使できる「防衛出動」は、「武力攻撃」の発生を前提としており、「武力攻撃」に至らない侵害への対応は「警察権」の行使によることになる。しかし今日、事態発生に際して「組織的計画的な武力の行使」か判別がつかない場合でも、突発的な状況が生起する、あるいは急激に事態が推移して重大な危機に陥る可能性が懸念されている。政府はこうしたグレーゾーン事態に自衛隊が迅速に対処できるようにするために、2015年の通常国会に自衛隊法改正案を提出することを検討している。