日本政府の集団的自衛権の限定的行使容認を受けて整備された平和安全法制のうち、日本と国際の平和と安全に関する法体系。自衛隊法をはじめとする関連法の一部改正から成り、2015年9月19日に成立、同30日に公布された(16年3月29日施行)。その主な内容は、(1)自衛隊法を改正し、自衛隊部隊による在外邦人等の保護措置の実施、米軍その他外国の軍隊またはこれに類する組織の部隊の武器等の防護を可能とする。また平時における米軍に対する物品役務の提供を拡充する。(2)国際平和協力法を改正し、いわゆる安全確保業務、駆け付け警護などを追加することによって国連PKOにおいて実施できる業務を拡大するとともに、その際の武器使用権限を見直す。国連が統括しない人道復興支援やいわゆる安全確保等の活動の実施を規定する。(3)周辺事態安全確保法を重要影響事態安全確保法に変更し、重要影響事態における後方支援活動等を拡充、支援の対象を米軍に加えて国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行う外国軍隊等に拡大するとともに支援メニューを拡大する。(4)周辺事態安全確保法の見直しにともなって船舶検査活動法を改正し、さらに国際平和共同対処事態における活動を規定する。(5)事態対処法に存立危機事態への対処等を追加する。またこれに関連して自衛隊法を改正し、新3要件の下での武力の行使を可能とする。(6)事態対処法の改正に関連して、米軍行動関連措置法を米軍等行動関連措置法に変更し、武力攻撃事態等における米軍以外の外国軍隊、存立危機事態における外国軍隊に対する支援に関する規定を追加する。海上輸送規制法、捕虜取扱い法に存立危機事態における措置を追加する。特定公共施設利用法については、武力攻撃事態等における米軍以外の外国軍隊の行動を利用調整の対象に追加する。(7)国家安全保障会議設置法を改正し、国家安全保障会議の審議事項に存立危機事態への対処、重要影響事態への対処、国際平和共同対処事態への対処を追加する。
国際政治を憲法解釈に従って整理した結果として概念的にさまざまな「事態」が想定され、各「事態」への対処が複数の法律にまたがって規定されたうえに、それらが一括して処理されたことから、国会審議が尽くされなかった問題があったことは否めない。実際、同法が初めて発動されたのは、国会の関心では必ずしもなかった「駆け付け警護」任務の南スーダンPKO派遣部隊への適用であった。