日米地位協定第1条(b)で「合衆国の国籍を有する文民で日本国にある合衆国軍隊に雇用され、これに勤務し、又はこれに随伴するもの(通常日本国に居住する者及び第十四条1に掲げる者を除く。)」と定義された者。第14条1では、「通常合衆国に居住する人(合衆国の法律に基づいて組織された法人を含む。)及びその被用者で、合衆国軍隊のための合衆国との契約の履行のみを目的として日本国にあり、かつ、合衆国政府が(中略)指定するもの」は、第14条に規定がある場合を除いては日本国の法令に服さなければならないとされており、特殊契約者は軍属とはみなされない。軍属およびその家族は日米地位協定上、関税および税関検査の免除、課税、刑事裁判権、外国為替管理などについて合衆国軍隊の構成員とおおむね同じ権利を保証されている。
米軍人や軍属による犯罪が発生するたびに日米地位協定、とりわけ刑事裁判権の規定は批判の対象となってきた。このうち軍属の公務中の犯罪については、2011年11月に、アメリカ側が事案に応じて自国において刑事裁判にかけることができる手続きを整備するとともに、アメリカ側が刑事裁判にかけない場合には、被害者が亡くなった事案などについて、日本側が裁判権を行使することについてアメリカ側に同意を要請することができ、これにアメリカ側が好意的考慮を払うことで両国が合意した。その後も「公務」の範囲の見直し(飲酒後の自動車運転による通勤は公務とは認めない)や刑事裁判等の処分結果の相互通報制度に関する新たな枠組みの構築など、地位協定は徐々に日本側の要望を取り入れた形で運用されるようになっていた。さらに16年5月、米軍属の男が沖縄県うるま市在住の女性の死体遺棄容疑で逮捕された(暴行殺人容疑で再逮捕)ことをきっかけに、日米両政府は軍属の範囲の見直しに着手し、17年1月16日に岸田文雄外相とキャロライン・ケネディ駐日大使が合意文書(日米地位協定の軍属に関する補足協定)に署名した。同補足協定とこれに関する日米合同委員会の合意によって、軍属の地位を与えられる者は以下のように明確化された。(a)アメリカ政府予算上の資金により雇用される在日米軍の文民の被用者、(b)在日米軍の監督下にある歳出外資金により雇用される文民の被用者、(c)合衆国軍隊が運航する船舶および航空機の文民の被用者、(d)在日米軍に随伴し、およびこれを直接支援するサービス機関の人員で、合衆国軍隊に関連する公の目的のためにのみ日本に滞在している人員、(e)合衆国軍隊に関連する公の目的のためにのみ日本に滞在しているが、合衆国軍隊に雇用されていない合衆国政府の被用者、(f)合衆国政府の正式な招請により、また合衆国軍隊に関連する公の目的のためにのみ日本に滞在している、などの要件を満たすコントラクターの被用者、(g)軍用銀行施設を運用する被用者、(h)合同委員会によって特に認められる者。コントラクターの被用者に関する通報や認定の見直しなどについても手続きが合意されている。日本政府は、軍属の範囲を明確化し、定期的に基準を見直すなど、その管理を強化することによって、同種の事件の再発防止につながることを期待している。