憲法は衆議院に対して内閣総理大臣の指名権と内閣不信任の権能を与える一方で、内閣に対しては衆議院を解散する権能を与え、国会と内閣との間のバランスをとろうとしている。しかし、総理大臣が与党の信任を得ている限り、内閣不信任案が成立することはない。現行憲法施行以後、衆議院議員の任期満了による総選挙としては、三木内閣の1976年12月の選挙があるだけで、ほかはすべて衆議院の解散に基づくものとなっている。内閣が衆議院を解散するケースとしては、憲法7条3号に基づき、天皇が内閣の助言と承認により国事行為として衆議院を解散する場合(7条解散)と、憲法69条により衆議院が内閣不信任決議案を可決、もしくは内閣信任決議案を否決したときで、後者の場合には内閣は10日以内に衆議院を解散できる(69条解散)。内閣不信任案可決による解散はこれまで第2次吉田内閣(48年)、第4次吉田内閣(53年)、第2期大平内閣(80年)、第2期宮沢内閣(93年)の4例があるが、最近ではこれらの場合であっても、内閣は憲法7条に基づき衆議院を解散している。内閣は同条が内閣に解散権を付与していると解しているからである。