民主的な統治形体は、伝統的に、国民と議会との関係に着目して、(1)国民が直接に立法を行い、議会を必要としない直接民主制、(2)選挙した代表議会を通じて国民が間接的に立法を行うにとどまる間接民主制(代表民主制)に区別されてきた。しかし、国民は代理人(代表)によってのみ主権を行使しうるとする代表制の原理と、国民自らが主権を行使するという民主制の原理とは、本来相いれない要素を含む。そこで、代表民主制をより細分化し、代表制原理で統一される形体(代表統治制)と、二つの組織原理を併存させる形体(半直接民主制)とが区分されることになる。半直接民主制の下では、国民はいわば議会と立法権を分有する存在として、能動的な国家機関になる。国民が直接に立法に介入する代表的な方法としては、(1)一定数の国民が発議した法案について議会の審議を義務づけるイニシアチブ(国民発案)、(2)議会が可決した立法について国民の賛否を問い、その結果を最終的な決定とするレファレンダム(国民表決)などがある。現代の各国憲法が採用している代表民主制の多くは、この半直接民主制である。スイス連邦やアメリカ合衆国の諸州は古くからの例であるが、第二次世界大戦後に制定された憲法典は、多かれ少なかれ、イニシアチブやレファレンダムの手続を定めている(1947年イタリア、58年フランスなど)。日本国憲法の場合、国政レベルでは国民発案の制度を設けず、憲法改正について必要的な国民表決を定めるのみで(96条)、いわば初歩的な半直接民主制を採用している。最高裁判所裁判官の国民審査の制度(憲法79条)も直接民主制の表れと説かれることもあるが、国民と議会との関係ではなく、国民が立法に介入する制度でもないから、その説明は誤っている。