財政は国民生活と密接にかかわるため、健全で適正な財政処理を行う必要がある。国政に必要な財源は広く国民に納税義務を課すというかたちで調達されるので、立憲主義の理念からも、国民が財政処理に関与することが求められる。まず、「代表なければ課税なし」という標語に示されるように、租税はすべて議会制定法で決定すべきだという課税法律主義が導かれる。この原理が認められると、徴収された金銭の使途を国民代表議会が監視する権限をもつことも当然視される。こうして議会は課税という国費の徴収について議決するだけでなく、国費の支出についても決定的な統制を及ぼすという憲法上のしくみができる。国民代表議会に財政作用に関する強い権限を認めるこうした近代的な原理が、財政民主主義である。日本国憲法もこの考え方を採用し、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならない」(83条)と定めている。「国会の議決」のあり方は、財政作用の内容によって種々ありうるが、国費の徴収には課税法律主義が要求され(30条・84条)、国費の支出には毎会計年度「予算」を議決する方式が採られ(85条・86条)、財産の管理・処分には法律が定められている(国有財産法・物品管理法など)。正常な財政支出のためには、次の会計年度が始まるまでに次年度「予算」が成立していなければならないが、国会における審議の進み具合によっては、前年度内に予算が成立しないという事態も起こる。この場合にそなえて諸外国の憲法は一般に特別の定めを設けているが、日本国憲法には何の規定もない。そこで財政法は「暫定予算」の制度を定めているが(30条)、この暫定予算自体「国会の議決」を要するので、これも成立しないという事態がありうる。これが「予算の空白」の問題で、現に何度も生じており、立法上の手当てが求められている。