20世紀の半ばまで人権保障は各国の国内法(憲法)の問題と考えられてきたが、第二次大戦後、国連憲章で「すべての者のために人権及び基本的自由」を尊重し、国際協力をなすべきことが強調された。世界人権宣言(1948年国連総会決議)により諸国の「達成すべき共通の基準」として各種の人権規定が設けられて以来、国際法上個人の権利としての人権を直接に承認したうえで、条約締約国にその保護義務を課すという考えが定着してきた。これが国際的人権保障であり、現在まで数多くの人権条約が成立している。(1)個別事項に関しては、51年の難民条約、65年の人種差別撤廃条約、79年の女子差別撤廃条約、89年の児童の権利条約など、(2)地域的なものとしては、50年のヨーロッパ人権条約、69年の米州人権条約などがある。最も包括的な条約としては66年の国際人権規約(76年発効)、すなわち、(a)「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)と、(b)「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)があるが、前者は社会権的な権利の保護を、後者は自由権的な権利の保護を、それぞれ目的とする。この違いを反映して、条約締約国の保護義務を確保するための国際的実施措置の内容も異なり、(b)自由権規約では国家報告制・国家通報制・個人申立制のすべてが認められるが、(a)社会権規約の場合は国家報告制しか認められていない。国際的人権保障は、国内での救済手段がすべて尽くされたことを前提とし、条約上の権利をどのようなかたちで国内法に取り込むかが問題になるが、その手続・方法は、原則として各国の裁量に委ねられる。日本国憲法の下では、自由権規約など内容が明確かつ具体的で裁量の余地のない条約は原則として国内法として直接適用できると解されている。