犯罪を取り締まり刑罰目的を達成するために、国は個人の身体の自由を強制的に奪うことができる。しかし、何らかの刑罰目的以外の目的(例:税の徴収)のためにも、個人の権利自由が制限されたり、不利益が課されたりすることもある。刑罰目的を達成するために行われる一連の活動は「刑事手続」と呼ばれ、強い物理的強制を伴う。そこで日本国憲法は、人身の自由という最も基本的な権利を保護するため、犯罪と刑罰はあらかじめ議会制定法(法律)で定めなくてはならないという罪刑法定主義を前提とし、アメリカ合衆国憲法にならって法律によっても変更できない適正な手続を明示している(33条以下)。大別すると、(1)人身拘束・家宅捜索に関する令状主義(33条・35条)のように捜査権限の濫用を防止するための被疑者保護規定と、(2)公平迅速な公開裁判や自白の証拠能力の否定(37条・38条)など刑事裁判権の適正さを確保するための被告人保護規定に分けられる。一方、刑罰目的以外のためにする国の活動は広く行政手続(非刑事手続)と呼ばれ、例えば、税務調査における質問検査などでも相手方の自由をある程度束縛し、不利益を課すことがある。そこで、「自由及び幸福追求に対する国民の権利」を「立法その他の国政の上で」最大限に尊重するという憲法13条の精神から、行政手続でも個人を尊重するにふさわしい適正な手順が求められる。行政手続といっても、不利益処分から立入り・検査などにいたるまで具体的な目的・手段・態様は種々ありうるが、一般的に公権力の決定により重大な不利益をこうむる者は、いわば自然的正義の理念から、事前の告知と公正な聴聞を受ける権利をもつと考えられる。行政手続法(平5法88)も、不利益処分を行う場合、聴聞・弁明の機会の付与などの意見陳述の手続をとるべきことを定めている。