司法権は最高裁判所と下級裁判所に属するが(憲法76条)、憲法で名称が特定されているのは最高裁判所だけである。下級裁判所の種類・構成・権限などはすべて裁判所法(昭22法59)で定められているが、最高裁判所は、判例の統一を図り、司法部全体の運営に責任をもつ唯一の存在として東京に置かれている。最高裁判所の長官は、内閣の指名に基づいて天皇により任命されるが、その他の裁判官(最高裁判事、14人)は内閣で任命する(憲法6条・79条)。したがって、合計15人の最高裁判所裁判官について内閣が選任権をもつが、実際には裁判官・検察官・弁護士・行政官などの出身枠があり、内閣の実質的な裁量は大きくない。裁判官となるには、「識見の高い、法律の素養のある」満40歳以上の者であること、10人以上は所定の法律専門職に20年以上の経験を有することなどが要件とされている(裁判所法41条)。最高裁の審理・裁判は、裁判官全員による大法廷又は5人ずつで組織する三つの小法廷で行われるが、事件の処理は小法廷での審理を原則とする。ただ、(1)初めて憲法判断を示すとき、(2)憲法違反の判断をするとき、(3)判例変更をするときは、必ず大法廷で処理される(同10条、最高裁裁判事務処理規則9条)。最高裁は、司法部の運営に責任をもつ立場から、「訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項」について、各種の準則(ルール)を設けることができる(憲法77条)。民事訴訟規則や刑事訴訟規則などはその代表例であるが、具体的な争訟事件に際して個別に準則を決めることもできる。議員定数不均衡訴訟で、「一般的な法の基本原則」を適用するかたちで、公選法の配分規定を違憲と判断しつつ、すでに実施された選挙自体は有効だとしたのは(1976年4月14日大法廷判決など)、その表れである。