裁判所が、具体的な法律上の争訟を裁判するに際し適用すべき法令の合憲性が問題となったときに、その法令の憲法適合性について判断することのできる制度。違憲立法審査制ともいわれるが、とくに司法権の行使に付随した司法裁判所による法律の合憲性審査というアメリカ型の制度を指すときは「司法審査制」と呼ばれる。合衆国の場合、こうした合憲性審査権は、もともと連邦最高裁判所が自ら創造した判例法上の権能であるが(1803年マーベリー対マディソン事件)、日本国憲法は、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」(81条)と明記している。違憲審査制は、司法権の行使に付随するかたちで憲法判断を認めるものであるから、下級裁判所も合憲性審査権を行うことができる。しかし、ある具体的な事件を処理するのに必要な場合にのみ、裁判所は違憲合憲の判断を行うことができる(必要性の原則)。したがって、具体的な訴訟事件がないのに法令の違憲性の確認を求めるような抽象的な憲法裁判は、認められない。最高裁も、いわゆる警察予備隊違憲訴訟でその旨を判示したが(1952年10月8日大法廷判決)、法定の民衆訴訟により事件が有効に係属している場合には、違憲主張を行う当事者の適格性にかかわりなく憲法判断をすることを認めているので、その限りで抽象的違憲審査の要素が混入していることになる。