国籍は特定の国家の構成員として認められる法的資格をいい、その有無により、在留国に対する自国民保護要求権(いわゆる外交保護権)、自国領域への自国民受入義務のほか、出入国・居住権・参政権・公職就任権・兵役義務などの区別があるなど大きな違いが生じる。そのため、国籍の取得や喪失の問題は、個人だけでなく国家にとっても重要な意味をもつが、国籍のあり方は各国の主権的な決定に任されており、国籍法(昭和25年法律147号)は、その要件や手続などを定めたものである。
国籍の取得には、(1)日本国民の子として生まれたことに基づいて認める生来的取得、(2)出生後の一定の事由に基づいて国籍を認める後天的取得の2通りがある。(1)の場合、父や母が日本国民である点に着目した血統主義を原則とし、日本国内で生まれた点に着目した生地主義によることもある(2条)。(2)の場合、(a)20歳未満の子が日本国民である父や母により認知された場合などに認める認知による取得と、(b)外国人が自らの意思で取得する帰化に分けられるが(3・4条)、帰化するには、引き続き5年以上日本に住所をもつ、自己や配偶者その他の親族の資産や技能により生計を営みうるといった条件がある(5条)。
国籍法は、平等原則(14条)などとの関係で、かつて父系優先主義の合憲性を争われたこともあったが、旧3条1項が定めていた「準正」要件――父母の認知による嫡出子たる身分の取得と父母の婚姻を要する――は、準正子と非準正子との間に不合理な区別を設けた平等原則に反する規定だとする最高裁大法廷判決の違憲判決が最近あった(2008年6月4日、非準正子国籍訴訟)。これをうけて婚姻要件を外した国籍法改正が行われ(平成20年12月法律88号)、09年1月から施行された。