社会権の一つで、人が生存または人たるにふさわしい生活のために必要な条件を確保するための権利。現代の社会国家は、資本主義経済の進展と経済格差の拡大により生じる弱者の生存・生活を保障することを任務としているが、これを個人の権利として捉えたのが生存権であり、ドイツのワイマール憲法(1919年)が代表である。日本国憲法は国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しており(25条1項)、その下で生活保護(公的扶助)のほか、国民年金等の社会保険、児童・障害者支援等の社会福祉、医療・生活環境に関する公衆衛生の各施策が行われている。権利の内容が抽象的であることから、生存権は政府の政治的責務を定めたものにすぎないという立場(プログラム規定説)も説かれたが、現在では立法・行政を拘束する権利としての性格が、一般に認められている。生存権に関する著名な最高裁判例としては朝日訴訟(67年5月24日大法廷判決)、堀木訴訟(82年7月7日大法廷判決)、学生無年金訴訟(2007年9月28日判決)、老齢加算廃止訴訟(12年2月28日判決)がある。