私生活の平穏や私的情報を保護するための権利。もともと私的領域ないし私事(プライバシー)は、財産権(憲法29条)、住居の不可侵(35条)、通信の秘密(21条2項)等によって法的に保護されてきた。しかし、19世紀後半のアメリカでは印刷・写真技術が進歩し私生活ののぞき見・公表が問題となったことから、ウォーレンとブランダイスが提唱したプライバシー権が、次第に裁判で認められるに至った。日本では、三島由紀夫のモデル小説「宴のあと」による不法行為(民法709条)が認められたこと(1964年9月28日東京地裁判決)を契機に、私法上の人格権として、さらには幸福追求権(憲法13条)の保障する「新しい人権」の一つとして、プライバシー権の理解が進んだ。当初は私生活の平穏を保護する権利(一人で放っておいてもらう権利)と位置づけられていたが、情報化社会の進展に伴い、現在のプライバシー権は、自己に関する情報の流通を支配する権利(自己情報コントロール権)にまで広げられている。住基ネット事件の最高裁も、みだりに個人情報を開示・公表されない自由が憲法上保障されるとしている(2008年3月6日判決)。個人情報保護法は、事業者による個人情報の取り扱いに本人の同意等を必要とすることを通じて、プライバシーを保護する機能を担っている。