個人の内面的精神活動の自由である。この自由を明文で掲げる憲法の例は少ないが、かつて治安維持法により特定の思想を理由に処罰が行われたことなどを踏まえて、日本国憲法は19条で保障している。思想・良心には世界観、人生観などの個人の人格的・倫理的な内面的精神活動が含まれるが、単なる好悪や是非の判断などは含まれない。公権力が、特定の思想を持つよう強制したり、特定の思想を持つことを禁止したり、いかなる思想を持っているか告白するよう強制したりすることは、許されない。このような内心への介入とは別に、例えば兵役につくよう平和主義者が求められた場合など、外部的な行動の命令と思想・良心の自由の関係も問題になる。最高裁判所は、公立学校の入学式で国旗・国歌に対して起立斉唱するよう校長が教職員に命ずることは、思想・良心の自由の間接的制約にはなるものの、慣例上の儀礼的所作にすぎないので、憲法に違反しないと判断した(2011年5月30日判決)。ただし、この職務命令に違反したことを理由に減給処分を行うことが許されない場合もある(12年1月16日判決)。