人による支配を排除して、法によって権力を拘束することで、国民の権利・自由を保障するという考え方。ヨーロッパでは古典古代、中世を通じて発展してきた思想であり、特にイギリスの裁判官エドワード・クック(1552~1634)が「国王といえども法の下にある」として絶対王政を批判したことで知られている。市民革命以降には権力分立と結びつき、近代憲法を支える基本原理として確立した。英米法における法の支配が司法の役割を重視するのに対して、フランス・ドイツ等ではかつては法律による行政の原理が強調されたが、現代では行政裁判や違憲審査制が広まり、大きな差はなくなっている。日本国憲法も法の支配の原理を基礎としており、そのことは憲法の最高法規性(98条)、個人の人権(第3章)、適正手続(31条)、裁判所の司法権・違憲審査権(76条・81条)に表れている。2001年の司法制度改革審議会報告書は、法の支配が「この国のかたち」となるための施策を掲げ、それに基づき、裁判の迅速化や裁判員制度、行政訴訟制度の改革や法曹養成制度の見直しが実現された。