天皇を国の君主または象徴とする政治体制のこと。明治憲法では天皇は主権者であり、統治権の総攬者であった。これに対して、国民主権に基づく日本国憲法の下では、天皇は日本国及び日本国民統合の象徴であり(1条)、国政に関する権能を持たず、内閣の助言と承認により、法律の公布などの憲法に定められた国事行為を行うのみである(3条・4条)。皇位は皇室典範の定めるところにより世襲される(2条)。皇室典範は、天皇及び皇族(皇室)に関する法規範であるが、日本国憲法の下では国会の議決する法律の一種である。皇位の継承は男系男子に限られているが、皇位継承者が少なくなっている現状で、女性の天皇(女帝)を認めるべきとの議論もある。皇室典範特例法により、2019年には日本国憲法の下ではじめて天皇の生前退位が実現されることになった。国会開会式のおことばなど、国事行為ではないが社会的影響力の強い天皇の活動(公的行為)は、憲法上許されるかどうか論争があるが、今上天皇による被災地の慰問などが、新しい象徴天皇のあり方(「平成流」と呼ばれる)を形成してきたことも確かである。