約200の独立した国家から成る国際社会は、国際法による規律を受けている。国際社会は国内社会のように権力的に統合されていないため、国際法は定立・適用・執行のすべての機能において、国内法とは異なる特徴を示す。国内のような制定法による立法は不可能で、条約と慣習法が主たる法定立手段とされ、裁判は原則として当事国の同意を前提とし、判例法も一般的な拘束性を認められない。国際法を実行に移す場合も、個別国家の憲法に基づき直接または間接に国内法を経由する。このような国際法の基本的性格は、主権国家を単位とする近代国際関係が成立した1648年のウエストファリア会議のころから維持されてきたが、20世紀に入っていくつかの変容も見られた。まず国際社会の平和維持と国際協力達成のために国際機構が設立され、国家に次ぐ国際法主体性を認められ、法定立の促進活動や国際法の履行監視が可能とされた。また常設的な司法機関が設置され、裁判による国際紛争解決のための制度も整えられつつあり、権力的な統合はないものの、一定の組織化が実現されている。他方、国際法は従来のように国家間関係を規律するばかりでなく、個人や企業、NGOといった非国家アクターの権利義務にかかわる部分が増大している。そしてヨーロッパのキリスト教国の間に始まった国際法は、植民地の独立を経て世界規模に規律を拡大し、さらに宇宙活動や深海底開発の規制、地球環境の保全などの新たな課題の解決に取り組みつつある。