人種・宗教・国籍・政治的意見などを理由として迫害の恐れがあるために外国に逃れて、国籍国の保護を受けることができないか望まない者。亡命者・避難民とも訳されるが、日本は1981年の難民条約加入に際して公式訳を「難民」として出入国管理及び難民認定法を制定した。ロシア革命以後大量難民の流出が増え、20世紀は難民の世紀といわれた。国家は自国領域に逃れてきた難民や亡命者を庇護する権利はあるが、保護する一般的義務はないものの、迫害の恐れのあるところに追放・送還してはならない(ノン・ルフールマンの原則)。第二次世界大戦後の難民の人権と基本的自由を保障するため、国連は51年に難民条約を成立させたが、その時間的・地理的制約を排除する難民議定書が66年に締結された。締約国は滞在または希望するすべての難民を受け入れる義務は負わないが、不法入国で処罰したりできない上に、一定の自由や便宜の供与が義務付けられる。21世紀になっても民族対立や地域紛争の結果難民は生じ続け、これに対して国連難民高等弁務官(UNHCR)事務所が救済活動に従事するとともに、出身国への帰還事業や条約締約国の受け入れ拡大をはかっている。