2006年12月に国連総会で採択された、強制失踪の対象とされない権利をすべての者に認める条約。正式名称は、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約。日本は09年7月に批准。強制失踪とは、国またはその指示の下で行動する個人あるいは集団が、逮捕、拘禁、拉致などによって個人の自由を剥奪(はくだつ)し、その所在を隠蔽(いんぺい)し、法律の保護の外に置く行為をいう。戦争状態など、いかなる状況下にあっても強制失踪を正当化することは許さない。被害者には、真実を知る権利や公正かつ適正に賠償を受ける権利などを認めている。また締約国には、強制失踪を刑事法上の犯罪とし、犯罪容疑者を処罰する義務が課される。さらに、締約国は、犯罪容疑者が自国の領域内にあるときは、他国または国際刑事法廷に身柄の引き渡しを行うか、裁判所など自国の権限ある当局に訴追する義務を負う。10年12月の条約発効後、11年に条約の履行を確保するため、10人の委員で構成される強制失踪委員会が設置された。同委員会は、個人または国家からの通報を受理し、検討する権限を有する。15年3月現在、締約国は45カ国。