2009年に就任したアメリカのオバマ大統領は、ブッシュ前政権下でアメリカの国際的威信が低下したと捉え、外交重視の方針によって国際的な地位の回復とイラク、アフガニスタンでの戦争終結を目指した。同年4月のヨーロッパ歴訪中にプラハで演説し、核兵器を唯一使用した国として「核なき世界」を目指す道徳的義務を負っていると述べるとともに、核軍縮、核不拡散体制の強化などを呼びかけた。さらに6月にはエジプトを訪問し、アメリカとイスラム社会との間の不信を脱する「新たな出発」を呼びかけ、イランとも条件なしに対話を行うとした。オバマ外交はアメリカのイメージを回復するのに一定の効果をもち、オバマは09年のノーベル平和賞を受賞し、10年4月にはロシアと新START条約を締結、8月にイラクからの戦闘部隊撤退に成功した。しかしイランおよび北朝鮮の核開発その他の問題の停滞、アフガニスタン情勢の悪化、中東和平の行き詰まり、中国との安全保障および経済での摩擦の表面化などの問題を抱え、10年の中間選挙でも与党民主党が大敗するなど、オバマ外交は当初の期待にかなうほどの成果は出せていない。