第4回6者協議で共同声明が採択される直前の2005年9月15日、アメリカ財務省がマカオ所在のバンコ・デルタ・アジア(BDA ; Banco Delta Asia)を北朝鮮による資金洗浄(マネーロンダリング)の懸念がある金融機関として認定していたことに端を発する。これが共同声明採択以前に発動された事実は、財務省が6者協議を担当する国務省とは別の基準の判断からこの措置を下していたことを意味する。この認定の結果、共同声明採択の翌日(9月20日)には、BDAのアメリカ国内口座の閉鎖、アメリカ金融機関との取引禁止などの措置が発表された。アメリカがこれを愛国者法第311条の発動による司法措置としたのに対して、北朝鮮は10月18日の外務省代弁人談話以降、一貫して「金融制裁」と呼んだ上でその解除を訴えた。第5回6者協議が中断した05年11月以降、北朝鮮が「金融制裁」の解除を6者協議再開の条件としたため、それ以降6者協議は停滞を余儀なくされた。アメリカは北朝鮮の中国系銀行への資金移転などを懸念し、この問題での中国の協力を求めていたが、06年7月の北朝鮮のミサイル発射後、中国銀行がマカオ支店にある北朝鮮関連の口座を凍結したことを発表し、ホワイトハウスのスノー報道官もこの措置を歓迎する発言を行った。ところが同年10月の北朝鮮の核実験以降、北朝鮮が「金融制裁」の解除を前提に6者協議に臨み、「初期段階合意」の成立を受け、アメリカも事実上、その措置を解除していった。