北朝鮮核開発問題で、2007年2月、6者協議で成立した合意。06年10月の北朝鮮の核実験を受け、北朝鮮がそれ以降も核実験を連続して行うに十分なプルトニウムを保有していたかどうかはともかく、アメリカは北朝鮮が連続して核実験を行い核兵器の信頼性が高まることを懸念した。さらに、中国外交部は核実験の直後から6者協議再開の必要性を訴えており、また国連安保理決議1718号も、憲章第7章(制裁条項)に言及しながらも、北朝鮮に6者協議の再開を求める内容を盛り込んでいた。中国は唐家セン国務委員を北朝鮮に派遣し、金正日から追加核実験を行わないとの言質を得た。このような経緯で再開された第5回6者協議第2セッション(2006年12月18日~22日、北京)で、議長国の中国は議題として、05年9月の6者協議共同声明の履行のための作業計画と、その第1段階でとられる措置を挙げていた。北朝鮮は「金融制裁」の問題が解決されるまでは、その議論に入ることはできないとして、非核化については実質的な進展はなかったが、これ以降、6者協議は、北朝鮮に追加核実験を行わせず、これ以上核物質を抽出させないことを最重要課題として、北朝鮮の非核化を進めることになったといってよい。またアメリカも、6者協議以外では北朝鮮との間で2国間協議をもたないという基本方針を覆して、07年1月にベルリンで北朝鮮と協議をもち、第5回6者協議第3セッション(07年2月8~13日、北京)が開催されるに至った。6者はここで、共同声明を履行するため、以降60日以内にとられる「初期段階措置」として、北朝鮮が寧辺の再処理施設を含む核施設を停止・封印を行い、その監視と検証のため国際原子力機関(IAEA)要員を復帰させることなどに合意をみた。北朝鮮がとる措置に対応して、緊急エネルギー支援として重油5万トンが提供されることになった。さらに、アメリカは米朝国交正常化のための協議を開始するとともに、北朝鮮をテロ支援国家指定から解除し、敵国通商法の適用を終了する作業を進めることに合意した。この文書では、(1)朝鮮半島の非核化、(2)米朝国交正常化、(3)日朝国交正常化、(4)経済およびエネルギー協力、(5)北東アジアの平和および安全メカニズムにつき、それぞれ作業部会を設置して議論することに合意した。ここからは、核実験を強行した北朝鮮に対して、その体制保全に有利な地域的取り決めと支援を提供することで、核放棄を促し核不拡散条約(NPT)に完全復帰させようとする意図をみることができる。「初期段階合意」では、その後にとられる「次の段階」(→「共同声明履行のための第2段階措置合意」)で核施設の「無能力化」措置をとることについて大まかな合意をみたが、その具体的な方法については後の協議に委ねられた。なお、「初期段階合意」は「北京合意」、または「2・13合意」とも呼ばれる。