朝鮮半島有事の際に韓国軍を指揮する権限。朝鮮戦争勃発直後の1950年6月、韓国軍に対する指揮権は国連軍司令官に移管され、その状態は停戦後も継続した。さらに、78年米韓両国は米韓連合軍司令部を設置し、韓国軍の作戦統制権を駐韓米軍司令官が掌握することに合意した。当初は、北朝鮮への抑止だけでなく韓国軍による北進をアメリカが抑えるという目的があったが、韓国軍によるクーデターなどの政治介入のたびにアメリカの「関与」の有無が問題視される一因ともなった。その後、韓国の優位が明確になり、韓国の民主化も進む中、94年12月に平時における作戦統制権は韓国軍に返還された。その後、慮武鉉政権は、米韓の対北朝鮮政策の乖離(かいり)が顕著になる中、対北朝鮮政策に関する韓国の自主的な発言力を高める必要があるという認識に基づき「協力的自主国防論」を唱えて「戦時」作戦統制権の移管交渉を進め、2007年2月、12年4月に移管することでいったん合意した。しかし、「戦時」作戦統制権移管は米韓同盟関係の不安定を招来し対北朝鮮抑止力を低下させることになりかねない、という保守派の懸念を背景にして、李明博政権は再交渉を行い、その結果、10年6月米韓首脳会談で「戦時」作戦統制権の移管を15年12月まで延期することで合意した。北朝鮮核問題など依然として不透明な情勢が続く中、再延期の可能性もないとは言えないが、世界規模で進む米軍の変革・再編の一環のもとに進められていることなので、再延期は容易ではない。