2012年12月19日韓国第18代大統領選挙で、与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クネ)候補が、1987年民主化以後の大統領選挙としては初めて過半数の得票である51.6%の得票率で、野党民主統合党文在寅(ムン・ジェイン)候補(得票率48.0%)を抑えて当選した。13年2月25日の大統領就任式を経て朴槿恵政権が成立した。朴槿恵大統領は、1961年の軍事クーデターから79年に部下によって殺害されるまで約18年にわたり韓国を率いて、その間驚異的な経済発展を達成した故朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の長女、韓国初の女性大統領である。98年以来国会議員を歴任し、前回大統領選挙の予備選挙では李明博(イ・ミョンバク)に惜敗した。今回は李明博政権下での経済格差の拡大などを批判、福祉や経済民主化を重点政策として掲げ、同じ与党でありながらも李明博政権を批判することによって政権への批判票を取り込むとともに、従来の支持基盤である保守、慶尚道、高齢者層のあつい支持に支えられて当選した。また、対北朝鮮政策に関しても「韓半島信頼プロセス」を掲げ、李明博政権よりは積極的な姿勢を示した。政権発足直後の北朝鮮の核実験やその後に続いた挑発的姿勢に起因して南北関係は停滞したが、一時は中断された開城(ケソン)工業団地は再開され、14年2月には金剛山で離散家族再会が実現するなど、南北関係の進展が予想される。また、大統領の訪米、訪中によって、米韓同盟60周年を契機として米韓同盟の深化を図るとともに、米中戦略的協力同伴者関係の内実化を図るが、日韓関係は歴史問題に起因して冷却したままである。国内政治においては、福祉などの政策課題に取り組む以前に、国家情報院による選挙介入事件や2007年南北首脳会談会議録の情報流出問題など、政局をめぐる問題に直面する。野党支持が低調なため国家議員の補選などでは与党が勝利するなど、政権が危機に陥っているわけではないが、大統領の意思疎通能力が問題にされるなど、政権が安泰というわけではない。