国家の安全を危うくする反国家活動を規制することで国家の安全と国民の生存および自由を確保することを目的とする法律。1948年に制定されて以後、12回にわたる改正が重ねられてきた。国家安保という本来の目的とは異なり、政権安保のため、政敵や反政府民主化運動を弾圧するために恣意的に利用されてきたという経緯がある。また、行動のみならず思想も取り締まるなど適用範囲が広すぎるという点、さらに、その量刑が死刑を含む余りにも重刑であり冤罪(えんざい)の可能性も排除できないという点などが批判されてきた。したがって、87年民主化以後、その廃止を主張する議論が韓国国内では提起されるようになった。また、冷戦体制下、南北対峙状況において、親共産主義、親北朝鮮の立場を主張する思想や活動を取り締まる必要はあったかもしれないが、冷戦が終わり、韓国と社会主義諸国との関係改善が進むのみならず、南北の交流も拡大する中で、その必要はなくなってきたという議論も根強い。また、北朝鮮は南北交渉の過程で、韓国の国家保安法を問題視し、その廃止を主張してきた。しかし、南北対峙状況が続いており、さらに韓国国内に北朝鮮の主張に同調するような「従北」勢力が存在しているなどの理由で、その存続を主張する保守勢力の声も強く、2013年1月現在、依然として存続している。