韓国にとって中国は朝鮮戦争(1950~53)で実際に戦火を交えた敵性国家であった。ところが、1970年代に入り、米中和解、日中国交正常化などにより中国をめぐる国際関係が大きく変容した。そうした中で韓国の対共産圏外交も大きく転換し、韓国は中ソと、北朝鮮は日米との関係正常化を目指すという、クロス承認を前提として対中外交が開始された。80年代に入ると、南北体制競争が韓国に有利になり、また中国も経済発展を優先するようになり、中韓を接近させる力学が働いた。その結果、中韓国交正常化が92年に実現した。それ以後、中韓は経済関係を中心に密接さを増し、2012年には、韓国の対中貿易額が2151億ドルで対日米貿易額の総額を上回った。その間、中韓関係が順風満帆であったわけではないが、中韓関係は委縮しなかった。その理由としては、第一に韓国経済における中国の比重の大きさである。第二に、対北朝鮮関係と朝鮮半島統一に関する中国の影響力に頼らざるを得ないからである。金正恩(キム・ジョンウン)体制の成立直後、北朝鮮の核実験に対して中国が懲罰的圧力を行使したことに対して、韓国では、北朝鮮の非核化に向けた中国の政策がより一層強硬なものに変わったと考えられている。さらに、中国が従来の北朝鮮寄りから、将来的には韓国主導の統一を認めるのではないかという楽観的な見方もある。13年6月の朴槿恵(パク・クネ)大統領の訪中で合意された「中韓未来ビジョン共同声明」では、戦略的協力同伴者関係を内実化するための具体的な行動プログラムに関しても合意が形成された。ただし、韓国が北朝鮮の非核化を主張するのに対して、中国は朝鮮半島の非核化という言葉で応えており、中韓の対北朝鮮政策には乖離(かいり)も存在する。中国の対朝鮮半島政策に関する韓国の楽観的期待は、そうした期待をかけざるを得ないという韓国外交の「苦渋」を示すものである。