韓国における大統領直属の諜報機関。南北分断体制下、恒常的な北朝鮮による浸透工作に対応するために、1961年に韓国中央情報部(KCIA ; Korean Central Intelligence Agency)が設立され、80年には国家安全企画部へと改称、さらに99年に国家情報院と改称され今日に至る。元来は、対北朝鮮関係の諜報活動が主任務であったが、当初は諜報任務のみならず捜査活動も含む広範な権限と人員が付与された。そのために、政敵の粛清、民主化運動の弾圧、選挙介入を行うなど政権維持のために利用されてきた経緯があり、そうした点を批判されてきた。2回にわたって改称されたのも、そうした批判を意識したものである。2013年には、前年の大統領選挙において本来政治的中立を守らなければならないはずの国家情報院が、与党朴槿恵(パク・クネ)候補を称賛し野党文在寅(ムン・ジェイン)候補を誹謗(ひぼう)するインターネットの書き込みを組織的に行っていた疑いが浮上し、これが与野党対立政局の争点となった。依然として国家情報院が国内政治に利用されているという疑惑が残る。