朴槿恵(パク・クネ)政権の下、中韓関係は急速に密接度を増した。密接な関係を支える最大の要因は経済で、韓国にとって中国は最大の貿易相手国であり、日米を合わせたよりも貿易依存度が深い。中韓経済関係をより一層強固なものにするために、2015年6月両国はFTA(自由貿易協定)に署名した。さらに、中国が中心となって設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも、日米が慎重な姿勢を見せ創設メンバーに加わらなかったのとは対照的に、韓国はいち早く参加を表明し創設メンバーとなった。ただし、10月にTPP(環太平洋経済連携協定)に関する大筋合意ができると、TPPから取り残されることに対する警戒もあり、韓国はTPPへの参加にも前向きである。韓国経済にとっては対中依存度が高ければ高いほど、それに起因するリスクを相殺するために対米関係が重要視される。安全保障面では、韓国は対北朝鮮を念頭に置いた米韓同盟を基軸とするが、北朝鮮の挑発を抑制する中国の影響力行使に期待し、韓国主導の統一に対する中国の同意を獲得するためにも、対米関係に劣らず対中関係が重要となる。したがって米中関係の狭間(はざま)において韓国が米中どちらかを選択しなければならないという立場に置かれることは最も避けるべきことである。15年9月2日、中国の抗日戦争勝利記念式典および軍事パレードへの招待を朴槿恵大統領が受諾した。同盟国アメリカは韓国の参加には当初否定的であったが、韓国は、日中韓首脳会談を開催するよう中国を説得するという条件でアメリカの黙認を得た。16年1月の北朝鮮の核実験、2月のミサイル発射によって、北朝鮮の挑発に対する中国のブレーキに限界が見られると、韓国は中国に対してより一層厳しい制裁を求めるとともに、中国の反対にもかかわらず、駐韓米軍へのTHAAD(終末高高度防衛)ミサイル配備に関する協議をアメリカとの間に進めるなど、中韓関係にかい離が目立つようになっている。