THAADミサイル(サードミサイル)とはTerminal High Altitude Area Defense Missile(高高度防衛ミサイル)の略称で、敵の弾道ミサイルを、大気圏に再突入した最終段階で迎撃するシステムである。アメリカはミサイル防衛システムの一環として在韓米軍への配備を検討していたが、中国は、自国の安全保障環境に悪影響を及ぼすとしてこれを警戒した。韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権は、北朝鮮に対する中国の影響力の大きさを考えると、中韓関係を良好に保っておきたいという思惑を優先させたため、THAAD配備には慎重であった。しかし、2016年1月6日の北朝鮮の4回目の核実験に直面して、朴槿恵政権は北朝鮮の挑発を抑制する中国の影響力にも限界があることを痛感、アメリカ政府の要望を受け入れることを決断し、ついに7月にTHAAD導入に踏み切った。17年5月の文在寅(ムン・ジェイン)政権成立以後、導入当初は批判的であった文在寅大統領も、当面は導入した現状を維持することを認めた。中国はTHAAD配備に猛反発し、在中韓国企業の企業活動への妨害や韓国への団体旅行の禁止など、実質的な経済制裁を加え、韓国経済に打撃を与えた。文在寅政権は、THAAD配備は中国に対するものではなく北朝鮮に対するものであると主張し、中国への説得を試みた。結局、17年10月31日に中韓合意が発表され、この中で韓国は中国に対して、THAADの追加配備はしない、日米韓軍事同盟を結成しない、ミサイル防衛システムには参加しないことを約束している。これによって中韓の対立は解消されたかに見えたが、中国は納得してはいないようで、依然として問題はくすぶり続けている。