日本が朝鮮半島を植民地支配していた時期、1937年の日中戦争勃発以降、特に太平洋戦争の遂行を目的として朝鮮半島にも国家総動員法が施行され、炭鉱労働などのため何十万人という規模の朝鮮半島の人たちが徴用工として動員されたにもかかわらず、彼らは労働への金銭的な対価をほとんど得られなかった。ところが、65年の日韓国交正常化に伴う請求権協定によって、徴用工問題が「完全かつ最終的に解決された」とみなされることとなり、未払い賃金の請求権が消滅してしまうか、もしくはその請求権を行使する韓国の外交保護権が消滅したという内容で、両国間で合意がなされた。合意後には韓国政府が徴用工に対して補償措置を採ったが、十分なものとは言い難かった。その後も、徴用工の当事者は、日韓の裁判所で未払い賃金の支払いなどを日本企業に求める訴えを起こしたが、「完全かつ最終的に解決された」とする日韓請求権協定の前に敗訴を余儀なくされた。ところが、2012年5月の韓国大法院判決で、日韓請求権協定や日韓基本条約の趣旨が韓国の正統な歴史解釈とは相容れないことなどを理由として、徴用工などの未払い賃金の個人請求権は消滅していないという解釈が示された。18年3月現在、差し戻し下級審などで審理が進行中だが、大法院判決として確定した場合、請求に応じない当該日本企業の在韓企業資産の差し押さえの可能性も出てくるだけに、韓国の司法や行政がどのような対応を示すのか注視される。