2011年のIOC(国際オリンピック委員会)総会で、2018年冬季オリンピックの平昌(ピョンチャン)開催が決定された。韓国にとっては1988年のソウル・オリンピック以来30年ぶりのオリンピックであり、国家的行事として位置づけられるだけに、2017年5月の成立から10カ月の文在寅(ムン・ジェイン)政権にとって、オリンピックの成功は使命であった。特に、北朝鮮による核ミサイル危機の真っ只中での開催だけに、韓国は北朝鮮を参加させることで軍事的緊張を軽減させようとし、一方の北朝鮮も国際的な制裁包囲網を突破するきっかけ作りとして参加を決断した。朝鮮半島の地図を象徴した「朝鮮半島の旗」(統一旗)を掲げた開会式における合同行進や、女子アイスホッケーの合同チーム結成など、南北対話につながるような平和友好ムードを演出しようとした。また、北朝鮮からは選手団だけではなく、応援団、参観団、テコンドーの示範チーム、音楽芸術団などが訪韓し、韓国における公演が行われた。北朝鮮の軍事的挑発を一定期間抑制するという意義はあった。さらに、その過程での南北特使交換や韓国特使の訪米などで、北朝鮮が軍事的脅威の解消と体制の安全保証という条件付きではあるが、非核化への意思を明確にした。その結果、18年4月末の板門店(パンムンジョム)での南北首脳会談、5月の米朝首脳会談の開催が合意され、朝鮮半島の緊張緩和が進むことが期待されるが、アメリカのトランプ政権の不透明さもあり、事態の展開は流動的で不明瞭である。また、当初は危ぶまれた安倍晋三首相の訪韓も実現したが、従軍慰安婦問題についての日韓合意をめぐる対立や、対北朝鮮政策をめぐる乖離が存在するだけに、日韓関係の推移も心配される。