もともと中国の軍事力はその規模(兵員数、兵器数など)において世界最大であるが、その質においては米ロなどに比べ大幅に立ち遅れ、質の向上が急務である。しかし1990~2010年まで国防予算案は前年比2けた台(14~25%)を維持し続け、07年には日本の防衛予算を超えている。10年国防予算は5321億元強(約6兆9000億円)で、対前年比で7.5%と22年ぶりに1けた台にとどまった。しかし12年の国防費は前年実績比11.2%増の6702億元(約8兆7000億円)、ドル換算で約1064億ドルと初めて1000億ドルの大台に乗った。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、08年時点で中国の国防予算はアメリカに次ぐ世界第2位となった。特にミサイル、核・ハイテク兵器の増強には目を見張るものがある。日米との平和共存路線・経済相互依存重視などを考えれば、日米にとって中国軍事力がただちに直接の脅威になるとは考えにくい。しかし、11年初めの次世代ステルス戦闘機「殲20」の試験飛行、空母建造の公表、さらにはアメリカ国防総省「中国軍事力に関する報告書」(09年版)で指摘された台湾対岸における1000基以上のミサイル配備(08年9月時点)、また近年、中国が主張する「海洋権益」の維持、拡大による、南シナ海、東シナ海での周辺諸国との小競り合い、緊張の高まりなど、当地域にとって脅威感は増している。12年11月の中国共産党第18回全国代表大会の「政治報告」では「海洋強国実現」が高らかにうたわれ、軍事力のさらなる増強の主要な項目として海軍力の強化があげられている。(→「人民解放軍」)