中国のメディアはここ十数年の間に量的、質的に劇的な変化が進行している。従来メディアといえば、例えば新聞は「人民日報」、雑誌は「求是」、テレビは中央電視台(中央テレビ局)などと、それに地方の党管轄下の同系統メディアしか存在せず、すべて基本的には党の路線や方針、典型事例などを伝達、宣伝するものであった。しかし90年代に状況が大きく変化した。が、それは民主化によるものではなく、市場化や世界的な情報化の波が押し寄せた結果であった。多種多様なメディアが登場するようになった。2001年末では、国内の新聞社は2000社余り、雑誌は約8700種、テレビ局は420局余り、ラジオは約300局。報道内容も、社会の深刻な問題や国際ホットニュースを生々しく伝えるようになってきた。新聞・雑誌では「南方週末」「経済観察報」「財経」、テレビでは「焦点訪談」という番組などに人気がある。もちろん党当局から見て「行き過ぎ」と思われる報道には依然として強い規制が働き、西側のような自由はない。06年1月、共産主義青年団(→「中国共産党」)の機関紙「中国青年報」管轄の雑誌「氷点週刊」が、党が公認した義和団事件などの歴史解釈を客観性を欠くと批判した論文を掲載し停刊となった。しかしこれをめぐる知識人の抵抗も続いている。将来限定付きだが自由な報道をメディアが拡大していく可能性はあるが、07年の第17回共産党大会でも報道規制は厳しく、胡錦濤政権は予想された以上にメディアへのコントロールを強化している。