米中関係は、ソ連を「共通の敵」としたいわゆる「新冷戦の時代」(1970~80年代)には比較的安定していたが、89年の天安門事件、91年のソ連解体、冷戦の崩壊以降、「対立と協調」「競争者とパートナー」の間を大きく揺れ動いてきた。対立面では、天安門事件後の経済制裁、クリントン政権1期目の最恵国待遇(FMN)の更新と人権問題など。他方協調面では、2期目のクリントン政権における97年秋の江沢民国家主席訪米、98年夏のクリントン訪中による「建設的戦略的パートナーシップ」の展開がある。しかし99年春、ベオグラードの中国大使館への米軍爆撃事件、李登輝「二国論」発言などが次々と起こり、米中関係は悪化した。続くブッシュ政権でも2001年4月に米軍偵察機と中国空軍機が衝突した海南島事件が起こるなど、摩擦・対立はあとを断たなかった。しかし同年9月11日の同時多発テロ以来、中国はアメリカとの共同歩調をとり協調・協力の強化を前面に出した。06年末からは米中経済戦略対話も始まり、アメリカは中国を「ステークホルダー(利害共有者)」と位置づけるようになってきた。09年1月発足したオバマ政権では、アメリカの経済不況の立て直しのために対中経済協力の強化を重視している。09年7月、外交安全保障、経済のハイレベル「米中戦略・経済対話」が初めてワシントンで開かれ、グローバルな問題も含めた共同文書が発表された。さらに11年1月には胡錦濤主席が大型代表団を引き連れて訪米し、オバマ大統領をはじめ米側首脳と精力的な会談を行った。こうした動向によって、「米中G2時代」の到来とも言われるようになった。しかし、中国が急速に経済力、軍事力、そして総合国力を増強し、アメリカの「一国覇権」を脅かす可能性を持つ以上、中国へのけん制、圧力をかけることも必要である。米中は依然として「揺れ動く関係」であり続けるだろう。