従来農村では党支部が全面的に農民をコントロールしていたが、改革が進む中で人口流動が進み、共産党員自身も経済活動に熱を入れるようになった。また末端幹部の腐敗などに対して農民が不満を抱き、抗議をするようになり、党支部による全面的な村統治が崩れていった。こうした中、1980年代末に農村の基層組織で半行政的、半自治的組織でもある村民委員会の主任・委員を村民自身が直接選挙によって選ぶという状況がいくつかの村で起こり、国務院民政部は90年代に入って農村統治の再編成、社会秩序の回復という観点から積極的に推奨するようになった。アメリカなど西側の研究者は農民の自主的な選挙という現象から民主化の高まりと評価する人もいたが、党による指導は堅持され、むしろ農村で崩れた党組織の再編・強化という意味合いもあることがわかってきた。都市でのこうした直接選挙は厳しく規制されてきたが、近年、都市の基層組織である居民委員会に代わって社区建設が広がっており、こうした中で住民自身が社区(コミュニティー)の指導者を選ぶ状況もかなり普及するようになって来た。