香港は、1997年の香港返還以来、「一国二制度」方式がとられてきたが、徐々に中国プレゼンスは強まり、「港人治港(香港人が香港を治める)」を求める香港市民の不安が増大していた。2014年7月には行政長官の直接選挙を要求して51万人のデモ行進が行われた。8月末に中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会は17年の行政長官選挙から住民の直接選挙を行うが、中国共産党指導下の指名委員会が事前に候補者を選別する方針を決定した。これに対して香港では抗議運動が激化した。9月26日からは「真の普通選挙」を求めて高校生と大学生の授業ボイコットおよびデモがおこり、9月29日には警察当局の暴力鎮圧に抗議して無期限の授業ボイコット、繁華街・商業地区での占拠が本格化し、「雨傘革命」と呼ばれた。香港学生連盟は「全人代の決定撤回」などの4項目要求を提示したが、習近平主席はこれに応じなかった。以後12月にかけて、市民や学生らは香港中心部の街頭を占拠した。デモは最大10万人以上が参加したが、政府側は譲歩せず、最終的に12月15日に強制排除し、占拠活動は終止符が打たれた。しかし、デモ参加者たちは「我々は戻ってくる」と自信を膨らませ、これを「前向きな失敗」と評価する海外のメディアも少なくない。今回のデモは香港市民の政治意識を高めたが、香港の将来はより不確かなものになった。