この構想は、習近平国家主席が2013年9月にカザフスタン・ナザルバエフ大学で行った講演で「シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード」の戦略構想を提起したことから始まる。各国ともに互恵Win-Winの「利益共同体」、共同発展・繁栄の「運命共同体」を建設しようと呼びかけた。その後、国内関係組織で具体的な構想が詰められ、14年11月に北京で開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で、習近平が世界に向かってこの構想の推進を提唱した。15年3月28日には国家発展改革委員会、外交部、商務部が共同で作成した「一帯一路」の「目指す展望と行動指針」が発表された。東南アジア、南アジア、ロシア、中央アジア、中東、アフリカなどの各国に参加を呼びかけ、すでに約60の対象国、およびASEAN、EU、アラブ連盟、アフリカ連合、上海協力機構など多くの国際組織が支持を表明している。その実践に向けて、各国への経済支援を行うためアジアインフラ投資銀行(AIIB)や中国・ユーラシア経済協力基金、シルクロード基金などが設置され、大掛かりな途上国の経済発展構想が提起されている。この構想には、これまでアメリカ・欧州を軸に形成されていた国際秩序を中国中心の国際秩序に移行させていこうとする狙いが見られる。まさに習近平の主張する「中国の夢」実現の国際版といえよう。トランプ政権下で保護主義を強めるアメリカの動きに対して中国のこのような拡大戦略が功を奏すことになれば、経済のみならず安全保障においても中国の影響力は飛躍的に拡大するかもしれない。しかし、中国も経済成長の鈍化、社会矛盾の深刻化などによって 「一帯一路」構想にブレーキがかかる内因も膨らんでおり、今後の動静が注目される。