カンボジアのポル・ポト政権による虐殺等の犯罪を裁くため設立された特別の裁判所。ルワンダ国際戦犯法廷などが国連主導で設置されたのに対し、フン・セン首相(→「フン・セン政権」)はカンボジアの法廷で裁くことを主張。国連などとの協議の結果、カンボジア判事と国際判事の合議による国内の特別法廷になった。二審制で最高刑は終身刑。ポル・ポト政権は1975~79年に、過激な共産主義政策によって虐殺や飢餓で200万人近くの犠牲者を出したとされる。最高指導者ポル・ポトは98年にジャングルの支配区で病死したが、特別法廷は投降したポト派ナンバー2のヌオン・チア元人民代表議会議長ら指導者5人を逮捕。国民の強制移住や粛清など、人道に対する罪やジェノサイドの罪などで起訴した。トゥール・スレン政治犯収容所の元所長カン・ケク・イウ被告は12年2月に終身刑が確定。イエン・チリト元社会問題相は認知症を理由に同年9月に釈放されたが、15年8月に死去。これに先立ち、イエン・チリトの夫であるイエン・サリ元副首相も13年3月に死去している。残る最高幹部のキュー・サムファン元国家幹部会議長とヌオン・チア被告には、14年8月、第一審で求刑通りに終身刑が言い渡された。2人は上訴したが、16年11月23日、上訴審で両被告の終身刑が確定した。