ミャンマーは人口の7割近いビルマ族の他に、約50の少数民族を抱える多民族国家で連邦制をとっている。1948年の独立以来、カレン族のカレン民族同盟(KNU)はじめ多くの少数民族組織が自治権の拡大や分離独立などを求めて武装闘争を繰り広げてきた。軍事政権は90年代に入り、カチン族のカチン独立機構(KIO)など20以上の少数民族武装組織との停戦に合意したと発表した。しかし、軍政は民族教育の禁止などの同化政策を推進し、政府軍による少数民族の殺害、虐待、強制労働、女性へのレイプ、強制移住などが続いたといわれる。少数民族組織は学生など国内の民主化勢力とも協力を進め、97年に15の少数民族組織が軍政の打倒と各民族の平等な権利の実現をめざして、国民民主連盟(NLD)との連帯を表明する宣言を発表した。民政移管後のテインセイン政権は少数民族勢力とも和平を進めており、2012年1月には長年、闘争を続けてきたKNUとも停戦に合意した。だが小規模な衝突は続いており、完全な和解には時間がかかりそうだ。