各国の領有権争いが続く南シナ海(→「スプラトリー諸島/南沙諸島」)で、2014年以降に中国が実効支配する数カ所の岩礁を大規模に埋め立てて造成した人工の島々。そのうち少なくとも3カ所では滑走路を建設したと見られ、軍事基地への転用を懸念する各国との緊張が高まっている。フィリピンは14年5月、自国領とするジョンソン南礁(中国名・赤瓜礁)での埋め立てについて中国に抗議。ベトナムなども同調したが、中国側は「自国領での主権の範囲の行動」と反論。15年5月には人工島の周辺を飛行していた米軍哨戒機に対して中国軍が無線で退去を命じるなど軍事的緊張を高めた。中国政府は同年6月、「埋め立て作業は完了した」と宣言。9月に訪米した中国の習近平国家主席にオバマ大統領が「重大な懸念」を表明したが対立は解けず、アメリカは翌10月、「航行の自由作戦」と称して米海軍のイージス艦を人工島の12カイリ内で航行させ、「中国の領海とは認めない」姿勢を示した。一方中国は16年1月、域内のファイアリー・クロス礁(中国名・永暑礁)に建設された3000メートル級の滑走路を持つ飛行場で、政府のチャーター機による試験飛行を実施。関係各国の抗議に対して、「民間航空の利用に必要な基準を満たしているかを確認する目的」と表明している。