南シナ海の領有権問題をめぐって、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国は紛争を予防するための仕組みとして南シナ海行動規範(COC)の策定を進めている。2002年にASEANと中国が南シナ海行動宣言(DOC the Declaration on the Conduct)に合意したが、実効性を欠いた。このため法的拘束力を持つ「行動規範(COC)」の策定を目指すことになった。13年のASEAN拡大国防相会議から4年越しの交渉の末、17年8月の中国・ASEAN外相会議で枠組み合意し、具体的な条文の策定への協議を開始することになった。しかし、法的拘束力の有無さえ明確にしない骨抜きの内容で、策定交渉が長引けば、中国が軍事拠点化を進めるための時間稼ぎに使われる可能性が高い。実際この間にも中国は、実効支配している南沙諸島の岩礁や暗礁を埋め立てて人工島の建設を進めており(→「スプラトリー諸島(南沙諸島)の人工島」)、埋め立て面積は16年5月までに13平方キロ以上になった。16年末までに各島に対空砲や地対空ミサイル等の防空システムを配備、主要な島には3000メートル級の滑走路や大型船が寄港できる港湾施設、通信・偵察システムなども整備して軍事拠点化を進めている。