タイの「国父」として敬愛を集めていたプミポン・アドゥンヤデート前国王(ラーマ9世)が2016年10月13日、バンコクで死去。88歳だった。国王としての在位は、現役君主としては世界最長の70年間に及んだ。長男のワチラロンコン皇太子が同年12月1日、新国王に即位した(→「タイ王室」)。プミポン国王はアメリカ・マサチューセッツ州に生まれ、スイスの大学に在学中、兄のラーマ8世の死により、1946年に王位についた。国王として、タイの地方の農村をしばしば訪問し、農村開発に関心を向けた。国王の発案で始まった灌漑や治水、特産品などをはじめとする農村活性プログラムは王室プロジェクト(Royal Project)と呼ばれ、伝統工芸や技術開発、教育や医療など幅広い分野にも及んで、累計5000件を超えた。これらの功績をたたえ、87年には国民と政府より「偉大なる王」を意味する追加の称号が贈られている。タイ国王は通常は政治に介入しないが、タイ政治が軍部と市民デモの対立で流血の事態となった92年には、自ら仲裁して混乱を収めた。英語、ドイツ語、フランス語などの語学に堪能で、発明マニアでもあり、写真家、作曲家でもあるなど、多才だった。1年間の服喪期間を経て、2017年10月25日から29日までバンコクで盛大な国葬が営まれ、約40カ国の王室や政府関係者が弔問に訪れた。日本からは秋篠宮ご夫妻が参列された。